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May 16, 2005

「13日の金曜日」と交通事故

キリスト教徒にとって不吉な日とされる13日の金曜日の「不吉さ」を定量的に実証しようとする試みが出てくるのは自然な流れだろう.1993年,ここでもBMJに,13日の金曜日と1週間前の6日の金曜日の英国での交通事故の数を比較した調査が掲載された.交通量は13日の方が少なかったのに,交通事故による入院患者は13日の方が統計的に有意に多かった(65 vs. 45, p<0.05).ただ,これは母数が少なすぎる.2002年,American Journal of Psychiatry誌に,フィンランドを対象に,1971年から1997年の27年間の交通事故死亡統計を解析した結果が報告された.13日の金曜日は他の金曜日に比べて,男性の死者数は増やさないが(1.02,95%信頼区間0.81~1.28),女性の死者数を有意に増やした(1.63,95%信頼区間1.19~2.25).13日の金曜日の女性の死亡の38%が「13日の金曜日効果」によるものとなった.著者らはその理由として女性が迷信に弱い傾向があることを挙げた.この調査結果は大きく報道された.ただし,この研究には,死亡日と事故日は必ずしも一致しないのでは?という指摘がなされている.そして2004年秋,BMC Public Health誌に,ヘルシンキ大学の研究者が反証を出してきた.彼らは上記研究の不備を多数指摘したうえで,1989年から2002年までのフィンランドの道路事故データベースを使って,21回ある13日の金曜日をそれぞれその前後の金曜日と,死者数,負傷者数,関係者数を比較した.その結果,13日の金曜日効果も,男女差もまったく見られなかった.ただし,13日の金曜日を恐れる人々が,外出を控えたり,自家用車じゃなくて公共交通機関を使ったりした可能性は否定できない.

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