May 13, 2005

喫煙のベネフィット?

喫煙は百害あって一利無しと言われるが,出生前に母親のタバコの煙に曝露した女性は,乳がんになる確率が低くなりそうだという疫学調査が報告された.相対リスク値が0.49(95%信頼区間が0.24~1.03)で必ずしも有意ではないが,そのメカニズムは以前から仮説としてあった.すなわち,妊娠中の喫煙→女性ホルモンレベルを下げる→胎児の女性ホルモン曝露が減る→乳がんリスクが減る,というものである.とはいっても,妊娠中の喫煙は,娘の乳がんリスクを少し下げるなんてことよりもずっと大きな健康リスクを生むことは言うまでもない.(William C. Strohsnitter et al. Breast Cancer Incidence in Women Prenatally Exposed to Maternal Cigarette Smoke. Epidemiology 16(3): 342-345, 2005.)

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Mar 15, 2005

携帯電話

American Journal of Epidemiology 15 March 2005; Vol. 161, No. 6

□Long-term mobile phone use and brain tumor risk

携帯電話の使用と脳腫瘍の関係を探った疫学調査(症例対照研究)。2000~2002年に神経膠腫(371人)か髄膜腫(273人)と診断された20~69歳を症例とし、年齢・性別・居住地域を合わせた対照(674人)を設定。携帯電話の常時利用のオッズ比は神経膠腫0.8(0.6~1.0)、髄膜腫0.7(0.5~0.9)。利用時間や電話のタイプとも関連なし。

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Feb 23, 2005

コーヒー

Journal of National Cancer Instituteの2月16日号より.

□Influence of coffee drinking on subsequent risk of hepatocellular carcinoma: a prospective study in Japan.
この内容は「<コーヒー>1日1杯で肝がんリスク半減 厚労省研究班(毎日新聞)」としてマスメディアで報道された.詳しくは「コーヒー摂取と肝がんの発生率との関係について ―概要―」にも載っている.普通の人なら、コーヒーをたくさん飲むと肝がんリスクが低くなることが分かったと受けとるはず.しかし,最後に「この研究でコーヒーに肝がん予防効果があるようにみえるのは、実は肝臓に障害がある人でコーヒーが飲めなくなっていることを示しているにすぎないという可能性も否定できません」なんて書いてある.また,「コーヒーで本当に肝がんが予防できるのかどうか、肝炎ウイルスを考慮せずに論じることはできません」とも書いてある.だったらどうして「コーヒーをよく飲んでいる人で肝がんの発生率が低い」なんていう見出しを付けんだろう? 自分自身の経験から言っても体調悪い日はコーヒーをあまり飲みたくならない.こういうプレスリリースは危ういなあと思う.以前,健康診断を定期的に受けてる人の方が健康だという「疫学調査」があった.普段から健康に気を使っている人が健康診断を受けているわけで,健康診断を受けたから健康になったのかどうかは分からない.分かりやすく言うと「バスケをしてる人は背が高い」ことと「バスケをすると背が伸びる」ことは全く別だということ.こういうことは無作為対照化試験じゃないと厳密には分からない.

□Coffee, Tea, and Caffeine Consumption and Incidence of Colon and Rectal Cancer
こっちは別の前向きコホート研究.カフェイン含有のコーヒーとお茶を飲むことと,結腸および直腸がんの発生率とは相関がなかったが,カフェイン抜きコーヒーを毎日2杯以上飲んでいる人は直腸がんが少なかった.

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Feb 22, 2005

ぜんそく

American Journal of Epidemiologyの3月1日号より

□Secondhand smoke, dietary fruit intake, road traffic exposures, and the prevalence of asthma: a cross-sectional study in young children.
UKの235の小学校の4~6歳児11,562人に対して、ぜんそくの症状と、間接喫煙(家庭内での喫煙者数)、自動車排ガス(大通りからの距離)、フルーツ摂取量との相関を調べた結果、間接喫煙のみ有意。

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Feb 21, 2005

Lead in Environment Causing Violent Crime - Study(Yahoo! News)

ピッツバーグ大学のNeedleman教授は従来から、鉛の健康影響として、IQの低下など以外に、衝動を制御する神経メカニズムを妨害し、反社会的行動や犯罪行為に走らせると主張してきた。 学会で報告された彼の最新の研究では、ピッツバーグ地域での少年犯罪の18~38%が鉛曝露によるという。だから、環境中の鉛を減らすことは犯罪防止にもつながるとのこと。

ただ、社会的なパラメータ(所得、教育水準、地域)と鉛曝露濃度はきっと相関が高いだろうから、どこまで交絡因子を取り除けているのか興味ある。

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Feb 12, 2005

ラドン

British Medical Journalの1月29日号の論文。
□Radon in homes and risk of lung cancer: collaborative analysis of individual data from 13 European case-control studies.
住宅でのラドン濃度と肺がんの関係を調べた13の症例対象研究(欧州9カ国、症例7,148人、対象14,208人)をまとめて解析。その結果、測定ラドン100Bq/m3上昇あたり8.4%(95%信頼区間3.0~15.8%)の肺がんリスクの上昇が見られた。実際のラドン濃度に変換すると、16%(95%信頼区間5~31%)となる。用量反応関係は線形で、現在の対策発動レベル(200Bq/m3)以下にも見られた。喫煙者は特にリスク大。家庭内のラドンによって、欧州全体で年間20,000人程度が肺がんになり、肺がん全体の9%(全がんの2%)に相当する。

ちなみに、最近の類似研究は、
米国→Krewski D, et al. Residential radon and risk of lung cancer: a combined analysis of 7 North American case-control studies. Epidemiology. 2005 Mar;16(2):137-145.
中国→Lubin JH, Risk of lung cancer and residential radon in China: pooled results of two studies. Inernational Journal of Cancer. 2004 Mar;109(1):132-7.
いろいろ→Pavia M, Meta-analysis of residential exposure to radon gas and lung cancer. Bulletin of the World Health Organization. 2003;81(10):732-8.

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民主主義

British Medical Journalの12月18-25日号より
□Effect of democracy on health: ecological study
世界の国について、被説明変数に、寿命・幼児死亡率・産婦死亡率、説明変数に、所得(GDP)・不平等度(ジニ係数)・民主主義の度合いをおいて重回帰分析した結果、民主主義の進んだ国ほど3つの健康指標が良かった。民主主義の度合いには、Freedom HouseというNGOの点数が用いられた。健康改善の手段として「民主化」もあると。

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Jan 19, 2005

タバコ(2004年の重要論文を振り返る)

タバコ/間接喫煙
Whincup PH, Gilg JA, Emberson JR, Jarvis MJ, Feyerabend C, Bryant A, Walker M, Cook DG. Passive smoking and risk of coronary heart disease and stroke: prospective study with cotinine measurement. BMJ. 2004 Jul 24;329(7459):200-5. Epub 2004 Jun 30.
従来の研究は配偶者の喫煙の有無だけを考慮してきたが、間接喫煙の機会はそれだけじゃないと主張。

タバコ/Doll博士/50周年
Doll R, Peto R, Boreham J, Sutherland I. Mortality in relation to smoking: 50 years' observations on male British doctors. BMJ. 2004 Jun 26;328(7455):1519. Epub 2004 Jun 22.
Doll博士の歴史的な論文発表されて50周年にあたる。

タバコ/法律/喫煙率/肺癌
Heloma A, Nurminen M, Reijula K, Rantanen J. Smoking prevalence, smoking-related lung diseases, and national tobacco control legislation. Chest. 2004 Dec;126(6):1825-31.
フィンランドで、40年に渡る、喫煙率と肺癌発生率の関係を、1975年の喫煙防止法の施行とからめて解析。

タバコ/死者数
Ezzati M, Lopez AD. Regional, disease specific patterns of smoking-attributable mortality in 2000. Tob Control. 2004 Dec;13(4):388-95.
2000年に世界で喫煙が原因で死亡した人は483万人(総死者の12%).さらに地域別・死因別に推計.

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Dec 28, 2004

湾岸戦争症候群

National Academicsから、湾岸戦争と帰還兵の健康問題との間の関係についてのレポート発表。燃焼生成物と肺がんの間の関係についてのみ因果関係を確認。Gulf War and Health: Volume 3. Fuels, Combustion Products, and Propellants (link)

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ダイオキシン/喫煙

Fierens et al., Gender dependent accumulation of dioxins in smokers. Occupational and Environmental Medicine 2005; 62: 61-62. 喫煙者の血清中ダイオキシン濃度を計測したところ、男性では喫煙者は非喫煙者に比べて40%ほど濃度が高かったが、女性は逆に喫煙者の方が統計的に有意に低かった。男女差の理由は「女性では、タバコの煙によってダイオキシンの代謝に相乗作用が引き起こされるため」によるそうだ。要約のみなので詳細は不明。 (link)

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