May 22, 2005

神経経済学(Neuroeconomics)

行動経済学のさらに先に神経経済学がある.いまのところ,経済心理学で指摘されてきた様々な「非合理性」が脳の活動によって「説明」されていくというスタイルのものが多い.Science誌の2004年10月15日号に載った論文 「別々の神経系が,今すぐと将来の金銭的報酬の価値付けを行っている」では,行動経済学で提唱されている「準双曲割引モデル」に,脳科学的基礎付けが与えられた.タイトルにある「別々の神経系」とは,新しい脳であり,理性をつかさどる前頭前野と,古い脳であり,動物的本能や衝動的行動をつかさどる辺縁系のことである.準双曲割引(quasi-hyperbolic discounting)モデルでは,「今すぐ」という選択に対して,0~1の間の係数がかかる(=近視眼的な選択を高く評価する).それ以降では,この係数が,辺縁系の活動と関連していることが示された. 茂木健一郎氏が『脳と創造性』で神経経済学に触れているし,「サイゾー」6月号のコラムでは山形浩生氏が「やった!割引率の生物学的基礎をつくりあげて、人の迷いと後悔を説明した、すごくおもしろい本を訳すことになった!」と書いている.これは多分,Paul W. Glimcherの"Decisions, Uncertainty, and the Brain : The Science of Neuroeconomics"(2004年)だろう.Glimcher氏は先に紹介した論文と同じ号に,「神経系在学:脳と決定の一致」というレビュー論文を書いている.もっと一般向けなら,Terry Burnham著"Mean Markets and Lizard Brains: How to Profit from the New Science of Irrationality"(2005)もある.これは,衝動的行動をつかさどる辺縁系を「とかげ脳(lizard brain)」と呼び,神経経済学の成果を,実際の投資行動などに応用する方法を提案している.ただし,内容は米国人向けに書かれているので,エッセンスを盗んで日本人向けに書き直したら売れそうだ.

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Jan 20, 2005

DEFRAの報告書

英国DEFRAによる報告書'Evaluation of the air quality strategy' (link).道路交通と発電所の大気汚染対策がうまくいったかどうか、費用対効果、費用便益分析の視点から。英国版「米国EPAのCAA1970-1990報告書」。

もう1つ、DEFRAの報告書。廃棄物管理の費用と便益。Stage 2: Valuation of the external costs and benefits to health and environment of waste management options (December 2004)(link

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Oct 22, 2004

AEI-Brookings Joint Centerのネタチェック

AEI-Brookings Joint Center for Regulatory StudiesのWorking Paperなどをチェック。(link)

Hahn, R. H, abd Malik, R. Is Regulation Good For You? Regulatory Analysis 04-02. May 2004
いつもの通り、OMBがレビューした省庁のRIAの数字をいじって改善を要求する話。目新しいのは、規制に詳しい経済学者たちに(みんなHahnさんの友人?)、もし自分がCBAを実施したなら何%の規制がCBテストをパスしていたかをアンケート。OMBの実績80%に比べてずっと低い36%が得られたそうだ。これは議論の補強になってるのか?

Posner, E. A. and Sunstein, C. R. Dollars and Death. Working Paper 04-15. Aug 2004.
行政も司法も死亡リスクをコントロールできる。行政は規制を通して、司法は不法行為法を通して。全く文脈が異なる裁判による補償額と費用便益分析におけるVSLを、ひとつの土俵の上に乗せようとする努力。議論はとても面白いが、やっぱり違うものだと思う。

Jaffe, J. and Stavins, R. N. The Value of Formal Quantitative Assessment of Uncertainty in Regulatory Analysis
Related Publication 04-22. Sep 2004.
2003年のOMBガイドラインでは、費用か便益が年間10億ドルを超える規制のRIAでは、定量的な不確実性解析を行うことが義務付けられた。そのため、他分野で使われているモンテカルロシミュレーションなどの手法が経済分析で流行りだすかもしれない、ということで先取り。

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Mar 19, 2004

規制影響分析

「規制改革・民間開放推進3か年計画」が3月19日、閣議決定。規制影響分析(RIA)の導入が明記される。(link

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Mar 05, 2004

RIA/英国

英国のNational Audit Officeの報告書"Evaluation of Regulatory Impact Assessments Compendium Report 2003-04"(Press Notice)

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Jan 16, 2004

MCA/CBA

イギリスDEFRAが報告書"Use of multi-criteria analysis in air quality policy"を発表。意思決定ツールとして、CBAとMCAを比較。動機のひとつが、CBAでの健康改善便益の金銭評価の困難にあるらしい。(report

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